国土数値情報を用いた地下帯水層蓄熱システムの導入可能性に関する研究

摘要

1997年12月に開催された気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP3)において決定した日本の二酸化炭素排出量6％削減に向け，政府は2010年の削減目標を8360万トンと定めた．このうち，民生部門は2740万トンと全体の約33％を占めており，建築·都市における一層の排出抑制努力が求められている．このため，建築物の断熱·気密性能の向上，機器の高効率化，都市排熱の有効利用などによる省エネルギー対策に加えて，太陽エネルギーなどのように季時別に偏在する新エネルギーをより積極的に活用するための貯蔵方式の開発が必要不可欠になると考えられる．蓄熱体あるいは熱源として多様な利用形態の可能性をもつ地下の熱利用システムは，地中熱交換器を用いて地下熱を間接的に利用する方式（地盤熱利用方式）と地下水を直接汲み上げる方式（地下水熱利用方式）とに大別される．後者に分類される地下帯水層を蓄熱体として利用する帯水層蓄熱(Aquifer Thermal Energy Storage: ATES)は，立地の制約が多いが，前記の間接熱交換方式と比較して効率は高くなる．