自動車のトライボロジー：ブレーキディスクによる摩擦特性の安定化

摘要

本シリーズでは例年、「自動車用ディスクブレーキ摩擦材の技術動向」と題して、ブレーキパッドやドラムのライニングに使われている、いわゆる摩擦材に関する話題が取り上げられてきた。 しかしながら、走行している車を減速あるいは停止させるための摩擦力を発生するという、自動車用ブレーキシステムの基本機能を果たすためには、パッドとディスクの両方が必要である。 よって、ブレーキディスク（以下、ディスク）も摩擦材と呼ぶべきであり、今回は、鋳鉄製ディスクの摩擦·摩耗特性について、概説する。 まず、ディスクとパッドを簡単に比較する（表）。 パッド材は複合材料として知られているが、ディスクに一般に使われている鋳鉄も、パーライト基地中に、体積率約10％の遊離黒鉛（グラファイト）を含hだ複合材料である。 摩擦材としてのディスクの役割は、車の使用期間に応じて変化する。使用初期段階では、ディスクのしゅう動面の表面性状と防錆処理皮膜の影響、経時変化としては、摩耗と熱変形について考慮する必要がある。 摩耗については、全体的な摩耗量と併せて、ジャダーの一因となる局所的な摩耗の発生を防止するために、ディスク円周方向の材質の均一性を向上させることが重要である。