溶射や蒸着により成膜された皮膜では，高機能化や耐久性向上の目的を果たす前提条件として十分な密着性を看していることが必要であり，皮膜の密着強度の評価のため，引張型密着試験法（JIS H 8402，ASTM C633）を含め種々の方法が検討·提案されてきた．引張型密着試験法の解説やその他の特徴的な手法については渡邊氏の解説記事を参照していただきたい．また，国内においても種々の界面強度評価法を集めたハンドブックを編纂する活動もなされているので，種々の評価法の解説についてはその発刊を待つこととして，本稿では界面圧子圧入法による皮膜密着強度評価ついて紹介する．皮膜の密着強さ測定法の一つである圧子圧入法（押し込み試験法）は，円錐形状やピラミッド形状のダイヤモンド圧子を皮膜に押し込み，最大押し込み荷重と発生したき裂長さから密着強さを評価する方法で，試験方法および試験片作成が簡便で，高温雰囲気下や密着強さが高い皮膜に対しても適用できる特徴を有する．特に，必要とする試験片寸法が非常に小さいのが特徴であり（5mm角程度の試験片で評価した例もある），実機で使用された部材から切り出した試験片を用いで密着強度を評価することが可能である．圧子圧入法による界面強度評価には，図1に示すような皮膜表面から圧子を押し込む表面圧子圧入法と，試験片断面で界面直上に圧子を押し込む界面圧子圧入法に大別される．前者は蒸着膜などの薄膜の密着性評価に，後者は溶射皮膜などの厚膜の密着強度評価に適している．
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