地熱地域における貯留層診断技術--熱水流動シミュレーションと組み合わせた解析方法

摘要

地表物理探査の結果を地下の流動に関連づけて解析を実施し，その結果を流動モデルの精緻化に結びつける地熱地域における貯留層診断技術について記述した。 この方法により，従来，坑井という"点"での観測とシミュレーションのモデルマッチングが，地表という制約はあるものの，"面"でのマッチングが図れるようになった。しかし，本手法でほ，地表で観測される物理探査データがすべて地下の熱水流動に関係すると仮定して解析を進めるため，地表の物理探査データの取得には細心の注意が必要となる。 そのためには精密な測定はもちろhであるが，地下の変動に関与しないノイズ成分の除去が重要となっている。 大霧地熱地帯での地熱貯留層モデルでは，自然状態および生産還元を実施している中での温度·圧力変化などをある程度説明できるモデル（モデル＿98）が作られた。 今後は，微細な圧力温度変化への対応などにより，より精緻なモデルを作っていくことが目標となる。しかし，モデルの進化とともに，一部自然電位分布の再現性が悪くなる現象も起こっている。 今後ほ，圧力や温度などの従来から行われていたヒストリーマッチングに加えて，複数の物理探査モニタリング（重力,比抵抗，自然電位など）や地化学モニタリンダデータを合わせてマッチングを因っていくこととなり，モデルの精緻化が期待される一方，ヒストリーマッチングにおけるノウハウの蓄積が一層求められるようになる。しかし，精緻な数値モデルを構築することは，それを元にして正確な生産予測を行う事ができるため,貯留層診断技術としては非常に重要である。 すなわち，蒸気量の減少（症状）が出現し,それに対するモニタリングなど（検査）を行って適切なそデルによる原因追及、（診断)がなされることにより，たとえば還元熱水の生産域への回り込みなどによる貯留層の冷却が原因の蒸気量の減少であれば,還元量の変更や還元パターンの変更による冷却防止処置（投薬）などが実施できるようになる。 原因追及（診断）の結果によっては，大量の水の注入などによって貯留層圧力を維持させる涵養（手術）などが必要な場合も生ずる。このような事態に対しても，数値モデルによる挙動予測（練習）を十分に積むことにより，最も適切な対処ならびにその処置に対する反応を予め予想してから手術を実施でき，処置に対するリスクを最小限に押さえることが可能となる。