RoHS指令対応短時間分析技術－一滴抽出法による臭素系難燃剤,六価クロムの分析

摘要

欧州で施行されるRoHS (Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment)指令では，鉛，水銀，カドミウム，六価クロム，臭素系難燃剤2種（ポリ臭素化ビフェニル(PBB)，ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)）の6物質の使用が規制される。 これに対応するためには，規制対象物質の含有情報が不可欠となる。含有情報は製造履歴の調査により得られるものも多いが，製造履歴が調査できないものも多くあり，これらに対しては，分析により含有情報を得る必要がある。測定数が膨大になることから短時間で分析できることが重要になるが，この条件を満たす手法として蛍光X線法が普及しつつある。 しかし，蛍光X線法は元素分析の手段であり，鉛，水銀，カドミウムの分析は可能であるが，六価クロム，臭素系難燃剤の化学結合状態の情報が必要なものは分析できない。六価クロムに対してはジフェニルカルバジド吸光分析法，臭素系難燃剤に対してはGC-MS (Gas Chromatography-Mass Spectrometry)法等があるが，いずれも数十時間以上と長時間を要するため，RoHS指令対応の分析には不向きである。これらの問題点を解決するため，質量分析を応用した一滴抽出法を開発した。一滴抽出法では，六価クロム，臭素系難燃剤の分析が1時間以内で可能であり，RoHS指令への対応も十分可能である。元素分析手法としての蛍光X線法と一滴抽出法を組み合わせることにより，規制対象6物質の迅速な分析が可能になり，含有情報が得られない部品や材料の評価に適用中である。