ため池の減災機能を高める底樋改修とネットワーク化

摘要

農業用のため池は，農村地域の潅漑用水を効率的に配水するために農地や水源地周辺に設けられてきたが，最近では混住化の進展によって都市と農村の距離が接近し，ため池周辺の都市化が進hできている。 このため，ため池の本来の機能である港漑用水を有効に貯留することに加えて，周辺地域の親水空間の提供や防災的な役割も重要な問題となってきている。 　 ため池の多くは100年以上前に構築されたものであるが，老朽化と改修を繰り返して今の姿になっている。 最近のため池に関わる災害の状況を見ると，毎年少なくとも100カ所以上のため池が何らかの被災を受けている。被災の原因としては，地震と豪雨が挙げられるが兵庫県南部地震と新潟県中越地震をのぞいては，豪雨による被災が圧倒的に多い。 最近のため池の被災状況の分析では，ため池上流からの土砂の急激な流入による堤体越水を原因とする決壊が多発する一方で，堤体が下流域への流出を食い止めて被害を防いだ例も多く，周辺地城にとってため池は減災機能を有する施設という側面を併せ持つことが明らかとなってきた。