トマトの養液栽培における水分ストレスに応じた給液制御システムの開発（3）－蒸発計蒸発量を指標にした給液制御－

摘要

著者らは，水分ストレスの付与による高糖度トマト生産を可能とするため，培地量が少ない根域制限式養液栽培システムを開発した（Oishi etal．，1996）．この栽培システムを用いて作物体に適度な水分ストレスを付与することで，果実糖度（Brix）を向上させることが可能である．しかし，給液量が不足するなどして過度な水分ストレスが付与されると，着果不良や尻腐れ果等の発生によって著しい減収となることがある．したがって，高精度トマトの安定生産のためには，時々刻々変動する気象環境下において，常に適度な水分ストレスを付与し続けることができる自動給液制御システムが不可欠である．そこで，前報（Oishi，2002）では，生体情報の一つである茎径変化を利用した給液制御システムを開発し，このシステムによって水分ストレスに応じた給液制御が可能であることを明らかにした．しかし，トマトの体内水分変化に対する茎径変化は加齢にともなって減少するため，この給液制御システムの適用可能期間は限られる．したがって，さらに長期間にわたる安定的な給液制御が可能なシステムの開発が必要である．