組織内細胞挙動を理解し複雑組織設計に活かすための 培養、解析雛型としての積層細胞シート

摘要

将来，より高度な再生医療や創薬スクリーニングを実 現するためには，血管などの複雑な構造を有する組織-臓器をできるだけ簡便な行程にて製造するプロセスが必 要である.現在，これらのプロセスの開発は，トップダ ゥン方式とボトムアツプ方式の両面で進められている (図1)'>.トップダウン方式は二次元あるいは立体的な 足場材を含む三次元的な培養場，細胞集塊培養などにお いて，生体内微小環境や組織発生時の機序、順序を再現 した培養条件にて分化や組織構造の形成を促し.成功例 を見いだす条件探索型のストラテジ一である.トライ& エラーの繰り返しにより至適条件を探索するため開発ス ピードは速いが，原理探究や体系化がスキップされがち で，たとえば，用いる細胞の株間に存在する性質の差（株 間差）により再現性が得られないケースが生じるなど， 生産プロセスとしての頑強性に問題を生じる頻度が高い と想像される.ボトムアツプ方式は微細加工技術などを 細胞操作や生物材料加工に展開し，ビルディングブロッ クである単一細胞あるいは細胞集塊の初期位置を制御す ることで複雑組織の形成を目指すものである.三次元印 刷技術を応用した細胞印刷技術はその代表格であり，他 にも，細胞シート積層化法（平面の積み重ね）などが知 られる：一方で，生体組織においては複数の細胞種が 接着や遊走の特徴や周囲の細胞外マトリクスの存在に応 じて自律的に動き，棲み分け，不均一な組織を形成する "自己組織化"によって組織形成が行われ，秩序だった 機能や構造を発揮、維持している.