第2回　いわゆる「アグロバクテリウム」について－（2）分類の現状一

摘要

人為分類色の強いAgrobacterium属の分類体系には，属.種および変種レベルにまたがって複数の問題が複雑に絡み合って存在していることから（澤田，士風　 2003；Youngg et al.,2005），それらを解消することを目指してさまざまな提案がなされてきた．その結果として，分類.命名に関する3つの異なる考え方（以下，それぞれを「システム」と表記する）が鼎立するという混乱した状況となっている（表1）．　 この3つのシステムは，「どれを使っても間違いではない」という意味では条件のまったく同じ選択肢であり，分類のユーザーの自由な選択に委ねられている状態である．しかし，どれを使うべきかの判断に困る，システムによって同じ学名が違う意味で用いられているなど，ユーザーにとって分かりにくい点が多い．ここでは，本属の分類における変遷の歴史を簡単に振り返りながら，それぞれのシステムの特徴と今後の展望について考えてみたい．