作物による窒素吸収が施肥由来の 一酸化二窒素発生量低減に果たす役割

摘要

一酸化二窒素（N_2O)は，地球温暖化の原因となる温室 効果ガスであり，化学肥料や有機質肥料など窒素を含む肥 料の農地土壌への施用は，大気中のN20濃度を上昇させ る原因の一^^とされている（鶴田，2000).そのため，国 の内外を問わず，施肥に由来するN20発生量の評価や発 生量低減のための技術開発が行われてきた.わが国も，窒 素肥料の施用に伴う農地土壌からのN20発生量を「日本 国温室効果ガスインベントリ報告書」の中で毎年報告し ており，わが国独自の排出係数（肥料として施用した窒素 の量に対し，施肥に伴って発生したN20態窒素の量の百 分率）を用いた排出量の算定が行われている（温室効果ガ スインベントリオフィス，2015).その排出係数は，通常， 作物が作付けされ，作物の根による窒素の吸収が起こる条 件で測定したN20発生量をもとに算出されるが，作物に よる窒素吸収量を決定づけ，時間とともに変化する作物の 根域の空間的広がりは，土壤環境や作物の特性によって大 きく変動する（小柳，1999).そのため，肥料として施用 された窒素とそれを吸収する根との位置関係は，農地土壤 から発生するN20の排出係数に不確実性をもたらす原因 の一つと考えられる.本研究は，農地土壤由来のN20発 生量の更なる低減に向け，窒素肥料の施用に伴うN20発 生に対する作物の窒素吸収の寄与を定量的に評価するとと もに，その寄与の大きさと肥料の種類や施用方法，作物の 特性との関係を明らかにすることを目的として実施した.