ヒラメ、カレイの裏表－異体類の左右性発現の機序とその異常について－内臓の左右軸形成と変態期の眼の移動との関わり

摘要

異体類では，脊椎動物に普遍的な内臓の左右非対称性に加えて，限と色素細胞の配置に非対称性がみられる。 体全体がこれほど極端に非対称性を示す生物は，全ての脊椎動物を含めても異体類に限られている。 異体煩の種苗生産で問題となっている限位異常や白化、黒化の発症棟序を解明するた捌こは，非対称性形成を制御している発生機構を理解する必要がある。 このように異体類の左右性は，発生学的にも増養殖の視点からも，非常に興味深くかつ重要な発生現象である。 近年の分子発生学の進展により，左右軸形成遺伝子と呼ばれるnodal-lefty-pitx2の分子カスケードが，内臓や脳の非対称性形成で中心的な役割を果たしていることが明らかにされている。 私達は，具体額の限の非対称性形成にわける左右軸形成遺伝子の機能に注目して研究を進めている。 これまでに，魚類胚における左右軸の形成機構，眼位適位を起こすヒラメ突然変異体reversed（兵庫県水産試験場で作製されたクローン家系）の表現型について解析し，内臓の非対称性を制御している遺伝子が，眼の移動方向の制御にも関与していることを示唆した。 ここでは，これまでに得られた結果の概略を紹介する。