トラフグ人工種苗の減耗要因の検討；天然魚と人工種苗の比較

摘要

全国で栽培漁業が推進されるなかで，様々な魚種の人工種苗量産技術が開発され，多くの魚種で大量生産が可能になってきている。 しかし，これらの人工種苗の放流効果は必ずしも上がっていないのが現状である。 放流効果の上がらない要因として，最近では放流種苗の質的な側面，すなわち放流種苗としての適性（種苗性）が放流効果を左右するものとして注目されている。種苗性の高い人工種苗は，放流後の天然水域での歩留りが良く，かつ天然資源と混じり合う。 放流した人工種苗が天然海域で生き残っていくためには，可能な限り天然の椎魚（以下，天然種苗）に近い諸性質を備えた種苗を生産する必要がある。 そのためは，人工種苗と天然種苗の各種生物学的特性の比較による基礎知見の集積が必要である。 種苗性評価に有効な指標を特定できれば，放流用の人工種苗を選別する技術，さらには天然種苗に近い行動特性を人工種苗に付与する技術の開発が可能となる。