人工炭酸泉浴における炭酸ガスと塩類の作用の分離評価：麻酔下ラットを用いた比重、浸透圧の検討

摘要

天然炭酸泉浴がヒト生理機能に与える影響がヨーロッパでは経験的に評価されている。炭酸泉浴は動脈血圧の低下や除脈,また、皮庸血管拡張による皮膚血流量の増加を引き起こすことが知られている。 しかしながら,炭酸泉のこれら生体機能への作用機構を体系的に解析した研究結果は少ない。 我々は、これら生理機能に対する炭酸泉浴の効果を人工的に作成した高濃度炭酸水と麻酔下のラットを用いて検討している。 これまでに、水温35°Cでは浴水の含有炭酸ガス凍度に依存して皮膚血流量が増加すること、血圧の顕著な変化なしに毎分心拍数を低下させることを報告した。また、心拍数の減少は副交感神経系よりも交感神経系の関与が大きいことを示唆する結果も報告した。一般に、天然の炭酸泉は多くの塩類を含むことが多く、炭酸ガスの効果と塩分の効果を分離評価することが天然炭酸泉浴の生理機能に対する効果を判定する上で重要と考えられる。我々は、天然の炭酸泉に多量に含まれていることの多い食塩を用い、人エ単純炭酸泉に溶解し循環器系への効果を検討した。 その結果,11.5％以上の食塩を含有した人エ炭酸泉に浸渡すると、動脈血圧と心拍数の変動係数が他の条件と比べ有意に低下することを発見し、その作用が炭酸ガスと食塩の複合効果と思われることを昨年度の本学会において報告した。今回は、前回の報告に例数を追加し確認した結果をまとめるとともに、食塩の炭酸ガスとの複合効果が、泉水の比重や浸透圧の差によるものである可能性に付いて検討するために、ショ糖を用いて行った実験結果を報告する。