段階的寒冷刺激時の毛細血管血流量とAVA(動静脈吻合)血流量 -顕微鏡観察法とレーザ一ドップラー法の併用-

摘要

全身が寒冷に曝露される場合、皮膚温は四肢末梢部ほど大きく低下する ことが知られている。図1には冷え性と非冷え性の被験者について室温を25°Cから15°Cまで低下させた時の皮膚温変化を示している（第54回本学会 大会，2015)。皮膚血管は収縮し血流量が低下することは一般に共通理解さ れているが、毛細血管観察装置（M320、株式会社JMC)を用いて中指爪床部 の毛細血管血流量を測定した。室温低下時の毛細血管血流量と血流速度の 変化について、冷え性者と非冷え性者を対象に行った実験結果を報告して いる。この時、室温が25°Cから20°Cへ低下した場合、毛細血管血流量およ び血流速度はいずれの被験者でも低下したが、続いて負荷した15°Cへの低 下では全員20°Cの値より増加、上昇に転じた。これらの程度は冷え性者ほ ど大きく、 25°Cの血流量レベルより大きく上回ったが、非冷え'性者では上 昇はわずかであった。皮膚温は冷え性、非冷え性者いずれの被験者でも室 温の低下に比例して低下が観察された。これらの結果から、寒冷刺激時の 末梢血管反応には毛細血管以外に動静脈吻合(AVA)血流の関与が示唆された。本研究では、段階的寒冷刺激に対する毛細血管反応に加え、AVA血流量の動態を明らかにし、衣服の快適 性研究に関する末梢循環における基礎データを得ることを目的とした。