ホルスタィン種初産牛における泌乳前期飼料中の非繊維性炭水化物含量が 血液性状、ルーメン内容液性状、産乳および繁殖成績に及ぼす影響

摘要

ホルスタイン種初産牛に給与する泌乳前期飼料における適正な非繊維性炭水化物（NFC)含量を 明らかにするため、飼料中のNFC含量の違いが 血液性状、ルーメン内容液性状、産乳および繁殖 成績に及ぼす影響について検討した。ホルスタイン種初妊牛52頭を供試し、分娩6週前から分娩 後16週までの飼養試験を2回実施した（1次試 験24頭、2次試験28頭）。試験では、共同購入 したチモシ一乾草、ヘイキューブおよび配合飼料 の混合飼料（TMR)を不断給餌した。分娩前は 共通の飼科を給与し、分娩後は標準的なNFC含 量の配合飼料と、トウモロコシを製造副産物で代 替しNFC含量を低減した配合飼料を用いてNFC 含量に差を設けた2種のTMRを給与した（1次 試験NFC 36.4% vs 34.0%、 2次試験38.9% vs 36.3%)。分娩後の体重および乾物摂取量に区間 による差はみられなかった。産乳成績は、NFC 含量の低い区で乳量の有意な増加や、乳脂率が高 くなる傾向が認められた。血液性状においては、 総コレステロール濃度がNFC含量の低い区で高 めに推移する傾向が認められた。ルーメン内容液 性状では有意な差ではないものの、NFC含量が 低い区でpHは高く推移し、エンドトキシン活性 は低く推移した。一方、繁殖成績では、NFC含 量が高い区で良好な項目が多かったものの、両区 に有意な差は認められなかった。 以上の結果より、初産牛の泌乳前期に給与する飼料中のNFC含量については、34%~39%の範 囲で設計しても大きな問題はないと考えられた。 また、今回の試験では、飼料中のNFC含量を低 減することにより、繁殖成績への影響は認められ なかったが、繊維の利用性向上、ルーメン内pH の低下抑制、エンドトキシン産生量の低減など、 ルーメン内の環境を改善できる可能性が示された。