凍結希釈液へのイクラ由来の脂質の添加が豚精子の性状に及ぼす影響

摘要

本実験では、イクラ由来の脂質を豚精液の凍結希釈液に添加して、凍結中または融解後の精子の運動性、生存性、膜性状、および融解精液の体外受精率および発生率に及ぼす影響について検討した。イクラ由来脂質の添加によって、運動性や低張処理により測定した膜性状率には有意な差が見られなかったが、1％添加区では精子生存率を5°Cへの冷却時でも融解時でも有意に改善した。一方でアネキシン染色では、その膜性状に差が見られなかった。凍結精液を体外受精に用いたところ、受精率には差がみられなかったが、胚盤胞への発生率において添加区が有意に高い結果となった。また、卵黄を添加していない希釈液にイクラ由来脂質を添加した場合でも、冷却時にその生存性に差が観察できた。以上よりイクラ由来の脂質成分は豚の精液に冷却耐性を与えることが示された。