森林土壌の保水性，透水性と雨水貯留能力の関係についての考察

摘要

「緑のダム」と呼ばれる森林の水源滴養機能，洪水防止機能を科学的に評価するには，森林土壌が雨水の浸透，流出過程において果たす役割を解明する必要がある。 従来より「森林土壌は透水性に富むため雨水のはとhどを疫透させることができ，洪水流量を抑制する」と考えられてきた。実際に林地表層の土壌の浸透能（＝飽和透水係数）を測ると，最大時問雨量の数倍～百倍もの「必要以上に」大きな値を示すことが多い。 そして，表層土壌中の雨水浸透は不飽和状機で起さていることが大半である。 従つて，浸透能の大きさの議論のみでは「緑のダム」の評価は不十分で，不飽和状態での透水係数の大きさが重要な要素になると考えられる（土壌の透水係数は含水率によって変化し，含水率が減少するほどバトさくなる）。 一方，従来から「森林土壌は孔隙に富み，浸透させた雨水を一時的に蓄える保水性に優れている」とも考えられpF値（＝孔隙の大きさ）で区分された有効孔隙量を計測し、「緑のダム」の容量を評価する試みも行われてさた。 けれども，少雨時にも，豪雨時ほど土壌が湿らないのに士層からの流出が発生することから，土壌はバケツのよ，うに常に一定の容量で水を蓄えるのではなく，貯水量は降雨の状況に応じて変化すると考えられる。また，水の動きやすい孔除と動きにくい孔隙の区別こは，pF倍よりも透水係数に着目するほうが合理的とも考えられる。 以上のことを背景に，土壌の保水性，透水性を統合し，降雨強度をパラメータとして，森林土壌の雨水貯留能力を評価する手法を提案した。