軽種馬生産地の持つ多面的機能評価－カウントデータモデルを用いた個人トラベルコスト法の適用－

摘要

従来，わが国における農業の多面的機能についての議論では，「日本人のふるさと」というイメージにつながる水田の景観形成機能や治水機能などの水田に関する棟能や，政策的関心の強い中山間地域での農業に関する機能が中心となってきた．また，他地域と異なり大陸的な農業が営まれている北海道では，美瑛などの畑作風景や，牛の点在する広大な牧場風景などが代表的な農業景観として取り上げられてきた．こうした中で，国内の代表的軽種馬産地である北海道の「馬」に関連したツーリズムが多面的機能という文脈で取り上げられる樵会は少なかったように思える（註1）．農業ツーリズムの先進地域であるヨーロッパでは，乗馬などの馬に関わるレクリエーションが観光の中で重要な位置を占めている．例えば，農業ツーリズムが盛hなフランスには「農家へようこそ（Bienvenue a Ia ferme）」という団体があり，そこでは手軽に乗馬を体験できる「乗馬ファーム」が，代表的なアクティビティの1つとして制度化されている（註2）．北海道は風土的にヨーロッパに近い面があるとされ，最近は台湾，韓国などの近隣諸国でも「いちばh近いヨーロッパ」などのキャッチ，コピーで北海道ツアーが組まれているという．こうした点を踏まえれば，北海道の「馬」に関連した農業ツーリズムにも，観光資源としてヨーロッパと同様の役割が期待される．実際に北海道の軽種馬牧場には，毎年多くの観光客が見学に訪れている．