植物工場野菜の生産,流通,販売の実態と課題

摘要

植物工場とは，「施設内で植物の生育環境(光,温度， 湿度，二酸化炭素濃度，養分，水分など）および生育 のモニタリングを基礎とした高度な環境制御を行うこ とにより，野菜などの植物の周年計画による生産を可能にする施設」（安保ら，2015 :p.l)と定義され，そ の使用光源によって次の3つの施設タィプに分類され る.すなわち，(1)完全人工光型（人工光のみを使用），② 太陽光人工光併用型(太陽光と人工光の両方を利用）,③ 太陽光利用型（太陽光のみを利用）である.日本施 設園芸協会（2015)によれば，わが国における植物ェ 場数は2011年3月時点で完全人工光型64箇所，太陽 光人工光併用型16箇所であったものが，2015年3月 時点には完全人工光型185箇所，太陽光人工光併用型 33箇所となっており，4年間で完全人工光型が約3倍， 太陽光人工光併用型が約2倍へと，全国で急速に広が つていることが分かる.また同時に，近年植物工場の 大規模化が進展していることも指摘されている.浦出(2015)によれば，植物工場による生産は，気象条件 の制約を受けにくい，あるいは全く受けないために， (1)定量的な安定生産が可能，②周年栽培（出荷）が可 能，③定品質（生産物間のばらつきが極めて小さい） の生産物の出荷が可能，(4)生産における歩留まりが大 きい，(5)栽培期間が相対的に短い，(6)計画生産'出荷 が可能，⑦無農薬栽培が可能で，虫や異物の混入を防 ぐことが可能なこと力ゝら，高い安全性を確保すること が可能であるとされている.しかし一方で，植物工場 が直面している課題をあげるならば，(7)認知度の低さ と②コスト（施設費，生産費）の高さであり，現状で は，多くの植物工場が十分な収益性を確保することが 困難な状況にある.今後，さらに植物工場が全国的に 展開することが予測され，植物工場が抱える課題とそ の要因を明らかにすることは喫緊の課題である.