森林における炭素と水の動きを安定同位体で探る（上）

摘要

森林を始めとする植物を中心とした生態系機能の解析には物質、エネルギー収支の視点からの検討が有効であり，安定同位体はトレーサーとしても生物反応の定量的な指標としても有効なツールである。 農業分野（農業生態系）においては，古くから窒素の安定同位体が窒素の菓面吸収をはじめとする植物の窒素代謝の解析に使用されてきた。 近年では，自然存在比レベルの軽元素の安定同位体比分析装置が汎用性の面で格段の進歩を見せており，その有効性や適用場面はさらに拡大するものと思われる。 特に，自然環境中に存在する安定同位体比の変化を指標にした場合，環境への人工物質を負荷することなく機能を解析できる点で優れている。