米の外観品質、食味研究の最前線〔18〕 高温耐性水稲品種の育成とその遺伝的要因の解明 -外観品質を主にして-

摘要

近年，登熟期間の高温による玄米外観品質の劣化が大きな問題となっている.特に2010年の猛暑で は，北日本を除く各地で一等米比率が大幅に低下し た.農林水産省の「平成22年度高温適応技術レポ一 ト」(http：//www.maff.go.jp/j/seisan/kankvo/ondanka/in dex.html)では，高温遭遇を避けるための作期移動 と高温耐性品種の育成および耐性品種への転換が 課題として挙げられている.本稿では高温耐性を持つ水稲品種育成の現状を 示すとともに，その遺伝的要因についてまとめたい.なお，本稿での高温耐性については，登熟期が高 温条件でも白未熟粒の発生が少ないことに絞って 話を進めたい.白未熟粒は，白濁が生じた部位によ り腹白，心白，乳白，基白，背白に分類される.こ れまでに，背白および基白は登熟期間の高温の影響 が大きいこと，また高温耐性についての最も適切な 指標であることが示された（長戸、江幡1965，飯 田ら2002).乳白も高温条件下で発生するが，背 白-基白よりも気温との相関が低く （若松ら2004)， その発生率は日射条件（小谷ら2006)，一 籾あたり の炭水化物供給能（中川ら2006)および土壌窒素 条件、若松ら2008)などによっても変動する.腹 白および心白については高温による影響は不明で ある.