植物の根に関する諸問題〔187〕－樹木の生理悟性を電気で探る（2）～E貼の季節変化と蒸散作用（導管側プロトンポンプの活動）－

摘要

岡本博士（名古屋大理一横浜市大文理）の庭先に50年生の次郎柿があった．このカキノキにクロマツと同様の計測方法を適用して野外用に簡便なシステムを開発した（岡本、正木1999）．1995年から野外の植物のTRP（Trans－root electric potential，連載第186回参照）について長期連続計測の実験に取りかかった．24　時間周期の電位振動をElectro－radicogram（以下，ERG）と呼び，1日の振幅を旬間ごとに平均しグラフ化してみると，興味深い結果が得られた．2月上旬，節分が過ぎると急に振幅が大きくなり始め，この振幅は開業直前にピークを迎えた．開業が終わると振幅は小さくなり，夏から冬まで多少の変化はあるもののそのまま経過することが記録された（図6）．その後も継続して計測しているが結果はまったく同様である．1996年頃から次郎柿の原木（静岡県指定天然記念物）の樹勢回復業務を行っていたので，根の活動を診るために健全な根の側と根腐れしている側との2カ所に設置して計測したところ，同様の傾向がみられた．また，根腐れしていた側の振幅の絶対値は健全な側と比較して2／3程度であった．電気生理学的構造や基本原理の理解は図1，3（連載第186回）に準拠している．