タイにおける熱帯果樹産地の輸出構造 －マンゴスチン農民グループにみる輸出流通のメカニズム－

摘要

本稿の目的は，タイの果樹輸出産地において農家が輸出流通のネットワークにどのように関わっているかを明らかにすることである．タイ政府は，農業、農村および食品関連産業の振興を重要な政策課題としている．中でも熱帯果実の生産は，戦後から近年に至るまで国内農業の発展を支え，最近では輸出増加を見越した生産奨励品目として位置づけられている．果実輸出総額は，2004年までの10年間で2倍以上に増加し，中でも生鮮形態の増加が著しい．特に，2005年農業生産改革戦略で生産奨励対象となっているマンゴスチンは，ASEAN－中国Fmの影響も受け，輸出のポテンシャルが高い果実のひとつとされている．90年代ほ1．5％前後だった生鮮マンゴスチンの輸出率は，2004年には10．2％となり，輸出量の77％は中国向けである．熱帯果実は，中国に対して競争力の高い品目である．今後も有望な市場であることから，中国を初めとする海外市場に接合されるタイ果樹産地の動きは注目に値する．