カンボジアにおける出稼ぎに対する資産規模の影響--工場出稼ぎとその他出稼ぎの比較--

摘要

カンボジアでは1990年代中頃から縫製産業が急成長し，今や縫製製品はカンボジアの輸出額の9割以上を占めている．縫製工場は約20万人を雇用し，その労働者の9割が農村からの出稼ぎ労働者である（Chea and Sok〔4〕）．また縫製工場ほどではないが製靴工場も出稼ぎ労働者を吸収している，これらの工場労働に加えて，建設労働などその他の職種の出稼ぎ労働者も増加していると推察される．こうした出稼ぎ労働者は村に残った家族に仕送りをしており（Chea and Sok〔4〕），それを通じて農村の貧困緩和に貢献しうる．出稼ぎの貧困緩和効果を評価するには，相対的に貧しい世帯が出稼ぎに従事しているか否かを明らかにしなければならない．そしてそのためには出稼ぎの決定要因を分析し，家の貧富が出稼ぎの意思決定に及ぼす効果を把握する必要がある．しかし過去にカンボジアにおける出稼ぎ決定要因に関する研究はなされていない．