土地改良区全国調査にみる賦課金の未収状況とその課題

摘要

土地改良区は基盤整備、事業費の償還業務のみならず、水利施設等の維持管理をも担っており、農業生産、農業経営において果たす役割は重要である。ところが近年、土地改良区の運営を支える賦課金未収の問題が顕在化してきだ。米価下落などの要因によつて農業経営が厳しくなつている中、賦課金負担は相対的に重くなつているが、賦課金の未収は事業に関わる償還や稲作に必要不可欠な水利に支障をきたすだけでなく、 土地改良区の運営やそもそもその存在自体を危うくしかねない。またこのことは、単に 一土地改良区の問題にとどまらず、例えば土地改良区の合併時の障害になるなどの問題にもつながっていく。そこで本稿では土地改良区の賦課金未収の実態について確認した上で、その対応について検討することとしたい。まず賦課金徴収の全体像を統計から明らかにしていきたい。ここでデ—タとして使用するのは、全国土地改良事業団体連合会による「土地改良区運営実態調査」の結果である。同調査は二〇〇五年三月三一日(二〇〇四年度末)現在に存在する全六、一〇三土地改良区に対して調査をしたものであるが、統計処理に耐えうる回答をしたのは四、五九〇土地改良区(七五ニパーセント)であり、したがって本稿で検討するのはこの四、五九〇土地改良区のデータである。