ナキクサギ（Ochotona rufescens）における生理的過剰排卵および生理的過剰黄体形成

摘要

実験動物化が進められているナキウサギ（Ochotona rufescens rufescens）のメスの生殖機能について検討した。 ナキウサギは実験室条件で連続発情，交尾排卵であり　 妊娠期間は26．5±0．5　 日であった。 妊娠期間中の血中プロジュステロン濃度は，妊娠4日より上昇し，妊娠22日に頂値となり，分娩後，急激に基底値レベルまで低下した。 妊娠各期における卵巣除去によって，血中プロジエステロンの急激な低下とそれにともなう着床不全，流産，死産または分娩死をおこし，ナキウサギの妊娠の成立，維持には卵巣由来のプロジエステロンが必須であることが明らかとなった。 交尾後22ー28時間においての排卵数は27．7±2．0個であり　 この動物の着床数6．7±0．5，産仔数5．1±0．5に比べてはるかに多かった。 妊娠黄体数は38．5±1．8個で，さらに排卵数よりも有意に多かった。 以上の結果より，ナキウサギは，自然の過剰排卵および自然の過剰黄体形成という極めて特異的な特徴をもつ実験動物であることが明らかとなり　生殖生理学分野において貴重な実験モデルとなることが示唆された。