文学の生まれる場所 －－宮沢賢治と東北（5）－－

摘要

宮沢賢治が菜食、独身主義者であったことはよく知られているが，今回は賢治が自らの菜食主義をモチーフとした作品「ビヂテリアン大祭」（大正12年頃の創作で，後に「一九三一年度極東ビヂテリアソ大会見聞録」というタイトルの作品に改稿予定だったとされる）について見てみたい。 この作品は生前未発表で，途中，何カ所か原稿が紛失している未完の作品であるが，単なる菜食主義への礼賛に留まらず，飢餓と食糧の問題など，賢治が一貫して自身のテーマとしてきた「食」にまつわる思想小説ともなっている興味深い作品である。