逸脱酵素-基本編-

摘要

今回から血液生化学検査の具体的な内容の解説に 入っていく。前回解説したように，血液生化学の検査 項目の多くがある特定の臓器の障害や機能を反映して 増減するため，その臓器の不調を判定するのにきわめ て有効な情報となることが多い。こういった特徴を示 す物質のなかには，ある特定の臓器(細胞）中に含まれ ていて，その臓器(細胞）が障害を受けた際に血液中に 放出され，血中レベルが上がることによって検出され るものもある。こういったメカニズムを利用して検出 される物質は，その臓器(細胞）中に一定レベル貯蔵さ れており，それが細胞外に出ることによって明瞭な濃 度差を生じる。さらに加えるとしたら，比較的安定し た物質で容易に測定できるものであればなお都合がよ い。そういった理由から特定の臓器(細胞）が貯蔵して いる酵素を測定して，その臓器の異常を検出する項目 が血液生化学検査には多く存在する。これらの酵素は 細胞力5'壊れることによって血液中に逸脱しているとい う意味で，"逸脱酵素"とよばれる。代表的な逸脱酵素 を表1にまとめた。