馬の脳血管自己調節機能に対するイソフルラン麻酔の影響

摘要

覚醒している成馬は，頭部の位置づけには関係なく約2腿Hgの頭蓋内圧 を維持していることから，頭部の静水 圧力勾配の変化が存在しても脳血流と 脳血流量を高度に調節していることが 示唆されている。イソフルラン投与に より，馬では頭蓋内圧上昇が生じ，麻 酔作用の長期化，低換気，および心臓 のレベル以下に頭部を下垂することな どの条件が加わると，この上昇はさら に悪化していく。脳灌流圧は，"脳血 流x脳血管抵抗"の値に等しく，ウイ リス動脈輪のレベルの平均動脈圧と頭 盖内圧の差として定義されているの で，平均動脈圧の上昇あるいは脳血管 抵抗の低下のような補償作用が伴わな ければ，頭蓋内圧の上昇は脳血流を低 下させるであろう。イソフルランを含むすべての吸入麻 酔薬は，馬では心拍出量および平均動 脈圧を低下させる。したがって，吸入 麻酔薬誘導性低血圧は，正常な状態では平均動脈圧を上昇させる作用および 脳灌流圧を維持する作用を持つ心臓血 管反射を障害すると考えられている。 さらに，吸入麻酔薬は不適切な脳血管 拡張を引き起こす。これが，の代謝 要求に一致する血流ならびに酸素供給 を調節している脳血管自己調節機能を 障害する。