鶏の獣医療 ～高病原性鳥インフルエンザを中心として～

摘要

過去25年間，様々な疾病が養鶏産業で問題となってきたが，最大の事件はやはり鳥インフルエンザの発生と思われる。 2004年1月，山口県にて79年ぶりに高病原性鳥インフルエンザ（H5Nl亜型ウイルスによる）が発生して以来，2005年には茨城県でH5N2亜型ウイルスによる発生（分離ウイルスは弱毒であったが），2007年には再びH5Nl亜型ウイルスによる発生が宮崎県および岡山県にて報告された。我が国では関係者の適切な防疫処置により撲滅に成功したと考えられるが，東南アジアやヨーロッパ等の海外では未だに発生例が報告されている。一部の国々ではヒトへの感染、死亡例も報告されるなど，今や，鳥インフルエンザは家禽のみならず重要な人獣共通感染症のひとつとして位置づけられている。