ウダイカンバの天然林の遺伝的多様性に関する研究

摘要

この度，第5回林木育種研究奨励賞を賜りましたことは，私にとって身に余る光栄です。ご推薦して頂いた森林総合研究所吉丸博志室長および協会の皆様，また，これまでお世話になった多くの方々に御礼申し上げます。 ウダイカンバ佑助血仇併細川ぬ血闇）は本州中部以東，北海道までの冷温帯林に分布する日本固有種です。 本種は長命な先駆樹種であり，また有用な天然資源であるため，生態学的，経済的価値の高い樹種といえます。 一方，昨今ではその優良木やスギヒノキなどの造林による林分の減少が心配されています。 更に，最近問題となっている広葉樹造林における種苗の産地を考慮しない流通の兆が本種でもみられ，遺伝子撹乱が危惧されます。ウダイカンバ材は天然林から生産されていることを考えると，資源の有効利用のためには，天然林の健全な維持が重要です。 そのためウダイカンバについて遺伝的多様性を適正に評価することが必要です。遺伝的多様性の維持は林の健全な維持と一体と考えられます。 そこで，私はこれまでにウダイカンバ天然林の遺伝的多様性について様々なスケールで研究してきました。