黒毛和種雌牛への茶葉給与による中毒と推測される2症例および茶葉給与の実態調査

摘要

管内において黒毛和種雌牛に乾燥茶葉および生茶菓を給与した後に中毒症状を呈した2症例に遭遇した。 初診時に体温上昇，食欲廃絶，振頭，流産，後退行動などがみられ，血液生化学検査ではAST値とγ－GTP値が上昇していた。 徴候は補液等の対症療法により半日で改善された。 茶葉はカテキン類，アミノ酸類，カフェイン，ビタミン，フッ素などの化学物質を有するが，臨床症状から中枢神経系に作用を有するカフェインの関与が疑われた。 管内は全国でも有数の茶生産地であるため，牛生産農家の茶葉給与実態調査を行った結果，茶葉給与経験がある農家は33％あり，茶菓の給与が分娩後の疲労回復や強壮作用効果をもたらすと期待されていた。また，茶葉給与によると推測される中毒は4戸，内2戸では死亡例があったが，農家の茶中毒の認知は14％と低かった。 なお，試験的にカフェインを成雌牛に経口投与した結果，血中カフェイン濃度は投与後急速に増加して3～6時間後に最高値となり48時間までに低下した。 しかし，カフェイン投与後に中枢性の興奮徴候はみられなかった。