牛の肺炎－抗生物質との戦い－

摘要

肺炎は，牛の呼吸器病を代表する疾病であり，哺乳育成期の子牛や肥育素牛に多発し，畜産経営に大きな経済的損失を及ぼしている。 発症牛は，発咳や鼻汁，呼吸様式の変化など特徴的な呼吸器症状を示すことから，近年，臨床分野ではBovine respiratory disease（BRD）あるいは症候群としての考え方からsyndromeを付けてBRDSと呼ばれることも多い。 この疾病は，飼養環境の急激な変化や過密な飼育，長距離輸送などのストレスが誘関となり，多くはウイルスや細菌およびMycoplasmaなどの病原微生物が複雑に絡み合う混合感染により発症すると言われている。 これまでも，主な病原微生物に関する報告は数多く，さらには次々と開発される新しい抗菌剤の効果についての報告も枚挙にいとまがない。それはまさに，細菌と抗菌剤との戦いの歴史であり，私たち臨床獣医師はそのいつ終わるとも知れない戦いの最前線に立たされていることも今更言うまでもない。