牛の分娩誘起における母年および産予の品種別にみた慶子娩出時間と分娩事故防止効果

摘要

牛の看護分娩を目的とした分娩誘起処置を実施し，品種別の産子娩出時間と事故状況を調査して，分娩誘起の有用性を検討した。 分娩誘起処置は，分娩予定日前後の牛延べ273頭にPGF2α製剤と副腎皮質ホルモン製剤を同時に筋肉内投与した。 平均産子娩出時間は，処置後28．6±8．6時間であり，品種別には黒毛和種牛（31．8±7．3時間）および交雑種牛（30．3±8．4時間）に比べ，ホルスタイン種牛（26．2±8．6時間）でやや短い傾向であった。 産歴や分娩予定日からの経過日数による違いは認められなかった。 ホルスタイン種牛産子における死産（死亡産子の発見を含む）の事故率は，2．0％と低い結果であった。 しかし，胎盤停滞の発症率が高く，全体の17．9％（49／273頭）に認められた。 また，分娩時に計画的に産子娩出を看護することが可能であったものは全体の85．3％であり，それらでは助産が可能であった。 以上のように，本分娩誘起処置は処置後20～37時間に分娩を誘起でき，分娩時間が予測できることにより看護分娩が可能となることから，産子事故を最小限に抑えるための手段として有用であることが認められた。