豚の初乳免疫の基礎知識と最新知見

摘要

全ての哺乳類の新生子(仔）にとつて，母乳は最適 の食べ物であるといわれています。母乳の栄養組成 は動物種ごとにその動物種の成長に合つたものに なっており，栄養素以外にも仔を感染から守る防御 物質や，仔の成長を促すような生理活性物質も豊富 に含まれます。母乳のなかでも特に重要となるのせ'初乳です。初乳は，分娩後およそ24時間（明確な定 義はない）に分泌される乳で，栄養素、防御物質-生理活性物質のほとhどを常乳よりも多量に含みま す（豚では乳糖、脂肪含量は常乳よりも低い）no胎 盤の構造上，胎児期の母子間免疫移行が起こらない 牛や豚では，初乳から防御物質や生理活性物質など の，いわゆる免疫成分を摂取し，体内に取り入れる ことが極めて重要で.初乳の摂取の有無、摂取量が その後の生育を左右するといつても過言ではありま せh。単胎である牛では，生まれた1頭を元気に育 てるために初乳が重要であると広く認知されてお り，生後24時間の推奨摂取量など多くの情報が既に 明らかになっています。一方で.多胎である豚では， 初乳採取の難しさもあってか，牛に比べるとまだま だ機能や重要性が学術的にもわかっていませh。今回は,我々がこの5年間ほどで得た豚初乳に関する研究データを交え，豚初乳の基礎的な情報や初乳か らの移行免疫の重要性を解説するとともに，母乳と いう最適の食べ物から別の飼料へ移る「離乳」とい う一大イベント力J,仔豚の腸管に与える影響もご紹 介したいと思います。