ホルスタイン種初産牛の子牛に対する粉末初乳製剤併用給与が移行抗体獲得に及ぼす効果

摘要

ホルスタイン種初産牛と経産牛の初乳の比重，Brix値，および子牛血清の抗体価（IBR，PI3，BVDl，RS，Ad7）を評価した。初乳の比重とBrix値において，初産，2産，3産以上の乳牛間に有意差はなかった。しかし，初産牛のワクチン（IBR，PI3，BVDl，BVD2，RS，Ad7）末接種群は，接種済みの初産牛，経産牛群に比較して，初乳に含まれるIBR，BVDl抗体価が有意に低かった。さらに，初産牛の子牛に対する粉末初乳製剤併用給与が移行抗体獲得に及ぼす効果を明らかにするため，子牛を次の4グループ，①初産母牛の初乳2Lを給与された初産子牛群（n＝14），②市販粉末初乳製剤2袋（600g）を給与された初産子牛群（n＝9），③初産母牛の初乳1Lと粉末初乳製剤1袋（300g）を併用給与された初産子牛群（n＝8），④3産以上の経産母牛の初乳2Lを給与された経産子牛群（n＝9）に分けた。子牛は，生後6時間以内に個々の初乳を給与され，初乳給与後12～24時間以内に抗体価測定のため採血された。粉末初乳製剤2袋のみを給与された初産子牛群の血清総蛋白質，γ－免疫グロブリンは，他群に比較して有意に低かった。しかし，初産母牛の初乳1Lと粉末初乳製剤1袋を併用給与された初産子牛群の血清の抗体価は，他群には認められた統計学的有意差がなかった。今回の結果より，粉末初乳製剤は，初乳の代用剤として完全に置き換えて給与するのではなく，多岐にわたる十分な移行抗体獲得に有効な初乳サプリメントとしての使用が適切である。