立位賺部切開による肥育牛の 潜在精巣摘出術

摘要

立位賺部切開により，交雑種肥育牛12頭の潜在精巣の摘出を試みた。そのうち10頭の潜在精巣は腹腔内に' 存在し，創外に引き出し摘出できた。2頭は精巣力s確認できなかった。精巣の停留部位は，骨盤腔前部の仙 椎直下が4頭，その下方5-20 cmが6頭であった。立位賺部切開法は，下腹部傍正中切開法，鼠径ァプロ ーチ法と比較して，精巣の探索，術創の切開，縫合，抜糸が容易であった。雄の肥育牛に対しては，肉質改善，雄性行動の抑 制を目的として去勢を行う必要がある。これは，精 巣の下降が不完全で，鼠径管ないし腹腔内に停留し， 陰嚢内に納まっていない潜在精巣においても男性ホ ルモンは分泌されるため，同様である。従来，潜在精巣摘出手術は，下腹部傍正中切開法1'4),鼠径ァ ブローチ法3)が広く行われている。今回，立位賺部切開により，腹腔内潜在精巣の摘出を試みたとこ ろ，従来の方法と比較し，術式や精巣の探索が容易 であった。