中国、内蒙古沙漠化、貧困地域における牧,農複合経営の発展－5示範戸の事例

摘要

蒙古族が定住して牧畜を営む中国内蒙古カルテン沙地のW村は沙漠化が激しく、住民が貧困生活を余儀なくされている。 沙漠化が牧畜に及ぼす被害は家畜飼養頭数の減少、午飼育の困難、乳内生産の減少など多岐にわたっている。 特に沙浜化が厳しいC部落では、少数の家畜しか飼養できず貧困である。 その上、数年おきに発生する早魅の年には、飼料の不足から山羊の流産、莞死など大きな被害が発生し、牧畜が一層衰退する。他方、村には、沙漠化の被害を軽減して牧畜、農業経常が繁栄している積極的な牧戸がある。この内5戸を模範的牧戸（示範戸）に選hで、技術導人に対する若干の資金援助を行って、5年間指導と調査を実施した。 G氏はその一人、中国政府から授賞した篤農家で、早魅対策として備蓄草地の設定、耕地に潅漑して穀類の栽培など多くの革新技術をいち早く導入し、村で最高レベルの収入を獲得している。 各示範戸は立地条件が相違し、農業と牧畜の重点が異なるなど経営の特徴があるが、積極的に先端技術を導入して牧畜、農業経営を発展させている。 家畜飼養規模は一般牧戸の2．9倍、牧畜収人は4．7倍、そして6．7倍もの牧畜、農業の総収入を上げた。このような高い生産を可能にしたのは、1）防風防沙林、林綱の造成、2）潅漑用井戸の建設とトウモロコシなど穀作物の潅漑栽培および3）草地を牧柵で囲い放牧強度を制御して、植生を修復させるなどの技術、そして、牧畜、農業の複合経営による収入の増加である。 示範戸の容易に実施でき、成果の上がり易い優れた技術、例えば、丘間低地へのサバクヤナギ（Salix flavida）の導入などを一般牧戸に普及すれば、貧困戸は次第に貧困を脱却するだろうと指摘した。