酸素－15、標識糖の超高速合成とモの応用: 時間との究極の戦い

摘要

近年PET（Positron Emission Tomography）と呼ばれる分子イメージング技術が注目されている．PETでは，~(11)C，~(18)Fなどの陽電子放出核種で標識した超微量（ナノ、ピコモルレベル）のトレーサー分子（PET薬剤）をヒトや動物に投与し，陽電子の消滅に伴って180度反対方向に発生する一対のγ線をPETカメラにより撮像してPET薬剤の体内分布を定量性のある画像データとして得ることができる．このPET薬剤を分子デザインすることによって様々な生体機能情報が得られ，先端的な医療診断や新薬の研究開発に応用されている．たとえば，~(18)Fで標識したデオキシグルコース（FDG；図1-A）は糖代謝が盛hな部位に蓄積するため，ガン診断，脳や心臓の機能評価に世界的に臨床で汎用されている．また，新薬候補化合物の薬物動態測定をヒトや動物にダメージを与えずに行なうことができるため，製薬会社でもPETの利用が進められている．たとえば，強い脳神経保護作用をもつことでも注目を集めている免疫抑制剤FK506（タクロリムス）をPET薬剤化し（図1月），正常サルや脳梗塞モデルサルにおける正確な脳内濃度を測定することに成功している．