遺伝学的手法を用いた大腸菌の新規レァラニン排出輸送体の同定と機能解析

摘要

細胞膜は小さな疎水性分子を除き，ほぼすベての物質 に対し透過障壁として作用するため，基質の膜を介する 選択的な輸送は細鹿の生理機能と恒常性を保つ上で重要 である.この輸送は，細胞内への物質（栄養物）の取り 込み輸送と，代謝産物（老廃物など）の排出輸送の二方向性があり，その重要性と研究の容易さから，各種基質 の取り込み輸送に関する膨大な研究がこれまでなされ， ァミノ酸や糖などの栄養物質の取り込み輸送体が数多く同定されてきた一方，排出輸送体に関しては，1980 年代以降抗生物質や重金属などの細胞毒性物質を細胞外 へ排出する輸送体の実体（タンパク質、遺伝子）力捉え られるようになり，1990年代以降はァミノ酸や糖， さらにはヌクレオシドなどの一次代謝産物を排出する輸 送体が遺伝子レベルで同定されてきた(4-6).これらの輸 送体に関する研究は，基礎生物学の研究対象として重要 であるばかりではなく，微生物を利用した物質生産を行 なっている産業分野においても非常に重要な研究領域で める.