イヌの難治性敵性角結膜炎に対するサイクロスポリンA点眼剤による臨床効果

摘要

乾性角結膜炎（Keratoconjunctivitis sicca KCS）は片眼または両眼の眼険ケイレン，開眼および羞明を主症状とした疾患で，多くは眼指を伴い細菌性結膜炎と診断されることもある。 この疾患は涙液分泌不全により起こり，いわゆるDRYEYEの状態となる（写真1）。 角膜水分の欠乏および涙液ムチン生産の異常などにより慢性経過をたどり，最後には角膜全体を色素が覆う色素性角膜炎にに至り視力を失う疾患である（写真9）。 原因としては遺伝性，神経性，外傷，感染性，薬物の副作用およびジステンパーウイルス由来などの種々の要因が考えられている。 また性別上メスに多いことや病態モデルマウスの去勢により涙腺炎が増加することなどから，テストステロンの介在も疑われている。 全身性紅斑性狼瘡およびリュウマチ性関節炎の抗体陽性犬にも多く発現し，病理学的な検査から免疫系の関連も指摘されており，人の自己免疫性疾患であるシューグレン症候群の病態に類似しているとの説もある。 ただし犬でのシューグレン様症候群の確定診断は現在なされていない。