鹿児島高等農林学校および宮崎高等農林学校における 牛乳、乳製品の教育研究概要

摘要

日本酪農科学会60周年記念事業誌で「わが国の大学 における酪農科学教育と研究」が取り上げられ，旧制帝 国大学，新制大学および私立大学における教育研究概要 について報告された。筆者は新制大学における牛乳、乳 製品に関する教育研究について分担した"。新制国立大 学農学部の多くは高等農林学校を母体として発足した が，高等農林学校時代の牛乳、乳製品に関する教育研究 については言及しなかった。官立の高等農林学校は明治 時代に食糧増産および農業技術者，農業教員，中堅技術 官吏の育成を目的として設立された。東北の振興という 国内政策もあって，まず1902 (明治32)年に盛岡高等 農林学校が設置され，次いで南方資源の開発のため鹿児 島高等農林学校が設置された。第一次世界大戦後の高等 教育機関拡充の中で，鳥取，三重，宇都宮，岐阜および 宮崎の5高等農林学校が設置された。また，日中戦争 が開始されると軍馬の需要増大，獣医の必要性から獣医 学科の設置や獣医に特化した帯広高等獣医学校が設置さ れた。これらの高等農林学校は1944 (昭和19)年に農 林専門学校に改称され1949 (昭和24)年に新制大学に 移行するまでの間，牛乳、乳製品に関する教育研究が行 われ，多くの有為な人材を官公庁，企業，団体に輩出し て乳の科学や乳製品製造技術の発展に貢献してきた。本 稿では，鹿児島高等農林学校と宮崎高等農林学校の牛 乳、乳製品に関する教育研究について概説する。