植物のウィルス防御機構に関する研究

摘要

トマトモザイクウィルス（ToMV)抵抗性遺伝子:Tm-ゾは，野生種のトマトに由来し，トマトの商 用品種にも導入されている力s,ポジショナルクローニングが困難な領域に座乗するために同定されて いなかった.私は，7>23-ゾをもつトマトの細胞抽出液に試験管内でToMVのRNA複製を阻害する活 性を見出し，これを精製することにより：Tm-ゾ遺伝子産物を同定した.Tm-lのアミノ酸配列から機 能を推測することはできなかった力5—. Tm-1はToMVの複製タンパク質と結合して複製複合体の形成 を阻害することによりToMVの増殖を妨げていることを明らかにした.また，分子進化学的解析を 行い，野生種トマトの:Tm-ゾとToMVは競争的な共進化を経てきたことを示唆する結果を得るととも に，両者の立体構造を決定して共進化の過程におけるタンパク質の構造変化を可視化することに成功 した.さらに，Tm-1の研究を通して.ウィルスのタンパク質と結合してその機能を阻害する因子は. ゥィルスが適応していない生物種には広く存在する可能性があること，ウィルスタンパク質が多機能 であることが進化を制約し，宿主域を制限し得ることを示した.