6．植物アルファ様ウイルスの増殖をサポートする宿主因子

摘要

植物ウイルスが宿主植物に感染すると，まず侵入した細胞の中でウイルス遺伝子の発現とウイルスゲノムの複製が起きる。 アルファ棟ウイルスの場合，侵入したゲノミックRNAから紛糾こ必領な蛋白質が翻訳され，相補鎖RNAを介してゲノムが複製する。 植物細胞はプラスモデスマ一夕と呼ばれる惜道で隣接細胞とつながっている。 プラスモデスマ一夕は，植物種や組織によって異なるが，例えばタバコの葉肉細胞では分子量1万以下の水溶性分子を自由に通す穴である。 ウイルスゲノムは一般にプラスモデスマ一夕を通過できる分子よりはるかに大きいが，ウイルスにコードされた移行蛋白質七総称される非構成蛋白質（ある場合にはプラス外被蛋白質［CP］）の働きによりこの穴を通って感染細胞から隣接非感染細胞に移行する。 細胞間移行と複製を繰り返すうち，やがてウイルスは維管束系に入り光合成産物などの転流に乗って全身に広がる（遠隔移行）。 これらの過程は，ウイルスゲノムにコードされた因子と宿主因子との協奏により進行する。 なお，動物ウイルスの場合，レセプターがウイルスの感染特異性を決める大きな要因であることが示されているが，植物ウイルスの場合ウイルスの細胞への侵入は特異的なレセプターを介さずに起きると考えられている。