顎顔面口腔領域の腫瘍および腫瘍状病変に関する研究-口腔扁平上皮癌のinvasivetumorffontにおける細胞増殖活性と予後因子の関係について-

摘要

Invasive tumor front（ITF）は，腫瘍の予後と強く関連しているといわれている．本研究では，口腔に生した扁平上皮癌のITFにおける増殖活性や癌抑制因子について免疫組織化学的検索を行うとともに，Ki－67 labeling index（LI）と臨床病理学的因子の関係について比較検討を行った．Ki－67はITFに強い発現を認めたのに対し，p73は腫瘍組織の辺縁部にその発現をみたが，一定の傾向をみなかった．また，性別，年齢，原発腫瘍の大きさ，所属リンパ節転移，病期分類，病理組織学的分化度，いずれの項目においてもKi-67 LIに有意差は認められなかった．しかしながら，所属リンパ節転移および病期の進行，病理組織学的分化度の低下に伴いKi－67 LIの増加が認められた．Invasive frontgrading（IFG）分類では，Ki－67LIはlow，in－termediateおよびhigh grade問で有意差を認めなかった．しかし，浸潤様式の評価点3は評価点1と比較し有意にKi－67 LIが高かった．また，p75の発現はITFの角化度と相関関係がみられなかった．以上の結果から，ITFにおける腫瘍細胞は腫瘍の中心部や表層部よりも増殖活性が高く，一九p7ちは腫瘍の増殖活性や分化とは関連がないことが考えられた?また，ITFにおける角化度や浸潤様式は腫瘍の性格を強く現しており，予後を評価するのにきわめて重要な因子であることが考えられた．