遊離前腕皮弁壊死後の組織欠損部をDP皮弁にて再建した1例 遊離前腕皮弁の術後管理と血栓形成時の対応について

摘要

要旨:近年マイクロサージャリーの進歩は著しく,頭頸部癌の拡大切除によって生じる様々な欠損部の一時閉創に役立ってきた.遊離組織移植の安全性と有用性はすでに確立しているが,組織移植の生者が100 %でないことも事実である.遊離移植組織の一部あるいは全部が壊死に陥った場合には,有茎筋皮弁による二次再建も適応としてあげられる?今回われわれは,遊離皮弁が壊死しその組織欠損部にDP皮弁を応用し,再建した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.患者は64歳の男性,口底部腫瘍の拡大切除術を目的に当科へ紹介来院した·右側口底部腺様嚢胞癌(T2NOMO)の臨床診断のもと, 2000年11月29日右側上頸部郭清術および副咽頭部郭清術,口底部悪性腫瘍切除術,下顎骨辺縁切除術を施行した.8×5cmの遊離前腕皮弁を作成し即時再建を行った.しかし術後5日目,血栓形成により組織が壊死したため,皮弁を除去した.組織欠損部はDP皮弁にて再建し,術後,経過良好である.遊離組織の生者が阻まれた症例において,早急かつ確実に組織欠損部の再建をおこない得るという点においてDP皮弁は依然として有用である.