名樹名匠物語「黒松銘樹、黒龍」

摘要

黒松屈指の名木である。数多い黒松名木の中でもサバ状のシャリ幹に特徴があり、年代感豊かなハゼた樹皮との相乗効果で神韻縹渺たる趣きを漂わせる(この黒松が中央栽界に知られたのは昭和初期に田中啓文の所蔵となつてからで、残念ながら産出地などの経緯不明。葉性、芽性、皮性などから愛知県周辺の産でほないかと推定されている。「黒龍」は田中啓文の所蔵は短く、昭和W年(1939)頃から終戦前後までだった。昭和お年(1947)になつて千葉県の愛好家、磯崎種吉の愛蔵するところとなり、高齢による手入れ不足を憂えて業者に譲るまで実に44年もの長きにわたり磯崎の水かけが続いた。平成3年(1991)磯崎から古松園、山上雅人(宇都宮市)へと移ったが、衰えていた樹勢回復には2年を要した。さらに神奈川県、横尾正之の所蔵となり、春花園、小林國雄の綿密な仕上げによつて国風賞を受賞(平成9年1997、第71回国風盆栽展)したことは周知のとおり。