グローバル化するバングラデシュ農村経済－経済構造変化のメカニズムと貧困への影響

摘要

アジア貧困国のひとつであるバングラデシュが，輸出向けアパレル産業の発展と海外出稼ぎ者からの送金を牽引車として，年率5～6パーセントの比較的高い経済成長を続けている。また，グラミン銀行などが活発な貧困緩和支援を農村で行っている。本稿では，ミクロな農村調査にもとづき，現在農村で起きている経済構造変化のメカニズムと貧困への影響を解明しようとした。その結果，（1）人口増加で土地なし世帯が急増したこと，（2）土地もち層は海外出稼ぎや商売など非農業部門に進出し，海外出稼ぎ者の多額の送金などが地域経済を活性化して貧困緩和にも貢献していること，（3）通勤圏内に非農業就業機会が少ない純農村部では貧困層はアパレル産業など都市への出稼ぎに活路を見出そうとしていること，（4）マイクロファイナンスの貧困緩和効果は相対的に少ないことなどがわかった。格差の少ない豊かな社会を実現するために，適切な政策や，より効果的なNGOの取り組みが期待される。