殺虫剤抵抗性の機構：特に作用点の薬剤感受性低下の分子機構

摘要

殺虫剤抵抗性の発達は，殺虫剤による選択圧が高いほど速くなる。 昆虫集団内では抵抗性要因となる遺伝子突然変異が起きては消えているが，殺虫剤散布は感受性個体を除去して，突然変異により抵抗性となった個体の生存と増殖を助長する。 すなわち，広い範囲で薬剤散布をくまなく行うことこそ，感受性遺伝子をもつ個体を速やかに減少させて抵抗性発達を促すという裏腹な結果を生む。 抵抗性発達を遅らせるためには，いかにして集団内で感受性遺伝子をもつ個体の割合を高く保っておくかが課題になる。 また，感受性または抵抗性遺伝子が発現した個体の環境適応性は，淘汰要因である薬剤散布が止hだときの集団内の感受性回復に影響する。 殺虫剤抵抗性の分子機構解明は，このような抵抗性発達や感受性回復を考える際の重要な情報となる。