昆虫病原性線虫

摘要

昆虫病原性線虫は, 昆虫病原性細菌と共生関係にある線虫類で，その殺虫活性の高さから害虫管理のための素材として世界各国で研究されており，生物農薬として利用されている種もある。 本線，虫類は，通常Rhbditida目のHeterorhabditidae科およびSteinernematidae科に属する線虫を指す。 前者にはHeterorhabditis属，後者にはSteinernema属とNeosteinernema属が知られている。 Neostemernema属は1種がフロリダから知られているのみなので, 本稿での解説は省略する。 Heterorhabditis属は現在までに9種が認められており，日本からH. indica, H. megidisの2種の分布が報告されている(YISHIDA et al. 1998)。 また, 日本からはまだ報告されていないが, 欧米各国では生物農薬として広く使用されているH. bcteriophoraが研究のために導入されている。 Steinernema属は現在までに31種が認められており，日本からはS. carpocapsae,S. feltiae, S. kraussei, S. kushidai, S. monticolumの5種の分布が報哲されている(真宮，小倉，1990; STOCK et al., 1998; YOSHIDA, 1998; YOSHIDA et al., 1998)。 これら5種のほかに，リボソームDNAのITS領域のRFLP解析によって既知種とは異なるRFLP型を示すグループが，未記載種として7種報告されている(吉田ら, 1995; YOSHIDA et al,1998)。 また，日本からはまだ記録がないS. glasenを成分とする線虫製剤が, 生物農薬としてすでに市販されている。 H. bacteriophoraおよびS. glaseriはともに韓国では分布が記録されているので(CHOO et al., 1995; STOCK et al.,1997),これら導入線虫も野外から検出される可能性がある。そこで, 導入種2種も含めた既知種9種を中心に末記載種7種も含めて形態による見分け方について述べる。